1.通常提案書は自発的に提案する文書の総称
前回の第3回で、通常提案書について言及しました。
あらためて書くと、『コンペにかかわらず、営業活動の中で、お客さまにこちらから自主的に提案するのが「通常提案書(unsolicited proposal)」です』。
聞き慣れないかもしれませんが、実はこれはさまざまな形をした提案書の総称なのです。
さまざまな形をした提案書
【提案書とは?】実はいろいろある!使える提案書の種類
提案書と提案資料は違う、というお話もしました。提案書にはこちらから読み手への意図があり、提案資料には事実や情報があり、意図や主張はない、というのが違いです。逆に言えば、意図や主張があるのが提案書なのです。
もちろん、営業担当者からすれば、表向きには事実や情報だけだから、お客さまは受けとりやすい、本当の主張は直接会ったときに伝える、ということはあります。提案書そのものは「主張するもの」です。伝えたいことが書いてあるから、ちょっと飲み込みにくかったりします。お客さまは意識して内容を見なければならないので、提案書の提出、というと、伝え方によっては、「なぜ今?」「この状況下で何がしたいのだろう」などと身構えられてしまう、ということが起こり得るからです。
逆に、提案書を出す際に、冒頭に会社の紹介をしたい場合に、会社概要のスライドを入れておくことは日常茶飯事だったりします。
たとえば、会社概要のスライドを探してみると、プレゼンテーションで見た、とてもきれいなスライドがあって、それを気に入って使っている、などということもまた、さらによくあることかもしれません。そのスライドは、プレゼンテーション用に作成されたものですね。それを提案書の一部として読み手に読んでもらうにあたって、適切かどうか、考えてみたことはありますか。
2.既存の情報をうまく利用できてますか
会社概要のプレゼンテーション、私たちは見慣れているから、わかっていることだからこれで十分、となりますが、本当にそれだけの情報で、読み手として想定している方に、伝えたいことが伝わるようにできているでしょうか。
つまり、読み手として想定しているのが、たとえば、お客さまのCIOや社長など、初めて当社の名前を聞いて、今回提案書を読んでくれる人だとすれば、それを紙に出力して渡すとして、そこに記載されている情報は想定している内容を十分伝えるものになっているでしょうか。一般的な情報を伝えたいのか、会社の規模、得意分野、所在地、あるいは理念、ビジョンなど、さまざまなポイントがあります。
このような観点で、一度、お手持ちのスライドを見返していただければと思います。
3.社内提案書はA3?
さて、今度は社長さまにご覧いただく提案書を作ることになりました。お客さまA社の担当者の方とタッグを組んで対策を練るというのもよくあるシーンかもしれません。
いつものスライドを使って、見た目をきれいにすればよいでしょうか。言葉遣いに気をつけて改変すればいいでしょうか。
そこで、A社の担当者から連絡があります。「うちは社内の資料はすべてA3なので、A3でお願いします。」
A3?なぜそんなに大きな紙で?どうやって作ればいいかはまた別の人に教えてもらうとして、何をどう書けばいいか、決まっているのだろうか。タイトルはどうすればいいんだろう。
慣れない人にとっては、さまざまな疑問、不安が心の中で一度によぎるものです。
まず、お客さまの社内資料を当社で作ることにも、疑問が残る方はいるでしょう。しかし、こうした場面に出合い、いずれにしても社長が承認して受注ができるなら、と、がんばって作ろうとする皆さんを、私は支援しています。
さて、このA3、もしくはA4横の社内提案書を、企画書、稟議書という名で呼ばれていることは多いです。提案書の呼び名は、シーンによって変わったりします。
とくに「企画書」という言葉は、業界によっては、上にお話ししたような提案書と同じ場合が多く、あるいは、提案資料、つまり提案メッセージのない提案書の体を表している場合がよくあります。
「稟議書(りんぎしょ)」という言葉は、まったく聞いたことのない業界もあれば、特定の業界にとっては業務そのもの、当たり前の社内書類だったりします。稟議書とは事業ラインの中で業務を行う、プロジェクトを開始するための社内における、いってみれば承認申請書です。承認を得るために関連各部署から役員、社長に至るまで読んで承認してもらう文書です。当然、発信側の意図、目的は明確で、その根拠も含まれていて「通常提案書」の要素はすべて入っています。つまり、社内通常提案書、ということですが、形としてはまるで「回答提案書」のような様式が存在しているのです。
4.まだある通常提案「書」
今までに私が作ったことのある提案書の中には、紙で出力して綴じたものではないものも存在しました。それは…そう、動画です。簡単な動画はもともと時折ご提供していたのですが、過去に何度か、職場の上司から、提案目的の動画コンテンツについて問い合わせを受けていました。最後に聞いたときには、一部業界では普通になっているとか。
ご縁があり、動画の通常提案書も依頼の都度製作しています。ゼロから作り出すことになり、撮影クルーをかり出したこともありますが、その後のコンテンツでは、内容が決まってくると、あとは動画の編集作業だけで終わることがが多かったと記憶しています。
上の社長に対する提案という意味合いで、某著名企業の社長に直接体験してもらい、即答を得られたのは、それを目的にしていながらも変な言い方ですが、まさに「驚くべき」体験でした。
今回は通常提案書についていろいろとご紹介してきましたが、通常提案書には、このようにさまざまな形があり、その都度読み手と意図に合わせて作る、もとい創るもの、と言えるのではないかと思っています。だからこそ、通常提案書とは、さまざまなタイミングに提出するものであり、バラエティに富んだ形をしているのです。
→ 参照:『コンペ・入札で勝てる提案書』第2章 通常提案書の作り方