提案書とレイアウト
提案書のパーツとしての文書や動画など、コンテンツ作成には、レイアウトという過程を避けて通れません。提案のメッセージやストーリーなどの内容をひと通り固めたら、それをどう見せるか表現を考えます。そしてそれを実際に作り込む作業をすることがレイアウトです。
デザインという言葉は、「設計する」という意味ですが、ないものをつくり出す、クリエイティブ、創造的な要素を含んでいます。一方でレイアウトは、「配置する」という意味で、もともとあるコンテンツをどう配置して、目的に対して効果的に見せるかを実践するものです。そこにはもちろんデザインの要素もあります。しかし、あくまでも目的主導であり、提案が通ることを主体とすると、いかに素晴らしい提案書も、成果物が作品となり、提案の役に立たないようであれば意味がありません。
レイアウトデザインとは、その意味で、あくまでもコンテンツを見せ、読み手に内容を腹落ちしてもらうためのデザインとして、提案プロセスの重要な一部と言えます。
レイアウトの専門家
提案資料を作ってほしい、今度やるプレゼンテーションのスライドを作ってほしい、などの依頼は日頃からさまざまありますが、その依頼をすんなりと引き受け、レイアウトして完成させる。こんな仕事をしている人、見たことありませんか。いろいろな呼び名がありますが、レイアウター、あるいはDTPオペレーターなどと呼ばれたりする方々です。
レイアウトと言う作業は、オフィスで文書を作成するすべての人がやっていることです。しかし、レイアウター、あるいはDTPオペレーターの人たちはその専門スキルを持っています。他の人が作った資料をきれいに仕上げたり、なかには筋道を立てて並べ替えたりと、受け手が読みやすいように変更したりすることもあります。
ちょっと聞いただけで、夢のような話と思いませんか?自分が作ったイマイチな資料を、きれいにしてくれるんですよ。ちょっとしたことなのに、時間がかかって仕方がなかった、憂鬱な時間を、ほかの仕事に当てることができるだけでなく、自分がやるよりも文書をきれいにしてもらえるんですから。
身近で便利なMS PowerPoint(パワーポイント)
お客さまを訪問する際に、Microsoft WordやExcelではなく、PowerPointでスライドを作って持って行くことが圧倒的に多いです。もちろん得意不得意や作業環境が理由で、別のソフトウェアを使う人もいるでしょう。しかし、こと営業になると、お客さまにビジネスの話を図に起こして説明するなど、Wordで入力する文字だけでは説明しきれない場面が増えていることも事実です。
文書作成の観点でみた場合、レイアウトの概念は、印刷物を印刷する元となる「版下」の制作と同様と言えます。PowerPointは、印刷の元データを制作するデスクトップパブリッシング(DTP)ソフトウェアの位置づけとなっています。実際、いまはほぼどこの印刷会社も、PowerPointのデータを受け入れています。
PowerPointによるレイアウトに限定して考えると、PowerPointには、一口には言えないさまざまな機能が盛り込まれた、それでいて専門家でなくても簡単に使えるように考慮されたソフトウェアだと気づきます。
PowerPointのスライドを文書として作成する場面は増えています。PowerPointは、本来は講演やセミナーのプレゼンテーションを作成するためのツールです。さらには、印刷物や動画までも作成することができるようになっています。
たしかに、図や絵を描いて見せたい、となると、身近にあって便利なのはやはりPowerPointですね。
しかし、見よう見まねで使っていると、もっと便利で複雑なことができそうなのに、なぜか○や△、□で作るのが限界… ツールの勉強なんてする時間、もったいないし、なんて声も聞きます。
ということで、なかなか腕が上がらないながらも、近頃はいけているアイコンや写真があるので、それを貼り付けてごまかしています。などと笑いながら言われる方もいらっしゃいます。お客さまに見せて説得するなら、ぱっと見てすぐにわかる、すっきりしていて、見て気分がよい印象を持たせる、そんなデザインになるといいですね。
もっとも簡単高機能なレイアウトツール
PowerPointは簡単高機能なプレゼンテーションソフトです。しかし、長い時間をかけてバージョンアップを重ね、今や、プレゼンテーションにとどまらず、白紙から印刷物や動画までを作成できる、もっとも簡単高機能なレイアウトツールなのです。
文書作成の観点でみた場合、レイアウトの概念は、印刷物の版下制作と同様と言えます。コンテンツ作成と並ぶ、文書作成の2大要素です。これをするのがPowerPointなのです。以下、印刷物と動画に分けて述べます。
1.印刷物用のレイアウト
印刷物用のレイアウトは、レイアウトデザインの基本となります。印刷した際の仕上がりと紙を前にした読者を想定して制作します。つまり、スライドのデータ作成を全面的に紙を前提として行います。では、紙を前提としたレイアウトとは、どんなものなのでしょうか。
まず、印刷の際のできあがりの紙の大きさを設定します。そして、上下左右の余白を設定します。そして、使用するフォント、サイズなどを設定します。写真やイラスト、図表などを含めた配置も、ルールにしたがって行います。
文字での表現と、静的な二次元の表現が、印刷用のレイアウトです。重なり合ったところは重なったことによる混色として表現されます。動きのあるものを載せるには、止まった瞬間の色と形を切り取ることになります。文書として扱えば、一枚あたりに入れる要素は多くなります。文字は全体として小さくなり、全体像を俯瞰するものも作りやすくなります。何より余白が重要となります。
PowerPointで作る文書のレイアウトは、印刷物用レイアウトをベースにすると簡単です。印刷物の制作に携わったことがあれば、PowerPointのレイアウトはかなり楽に感じられるかもしれません。
2.動画のレイアウト
これに対して、動画のレイアウトはどうでしょう。まず、動画には余白はありません。画面の隅から隅までを活用します。また、動画には時間軸があります。紙と同様、文字や絵を配置して表現できますが、文字を一画面でじっくり読ませるやり方は、動きを活用していないため、あまりとりません。むしろ、文字は少しずつ出して、少し読ませては消し、次の文字を出すと言う具合に、効果と時間軸を利用するのです。こうすることで、配置するものの大きさの制約をなくし、一度に出す要素を絞ります。全体像よりも流れが見えやすくなります。
フォントや配置のほかに、要素の出し方消し方などの効果、タイミングやアニメーションも配置、設定します。プレゼンテーションのアニメーションの制作は当然、動画に準じます。もちろん、動画編集ができればPowerPointは楽ですが、ユーザーインターフェイスがまったく異なるため、やりにくさを感じる方も多いかもしれません。
本来PowerPointがプレゼンテーションソフトウェアであることで、モニターやスクリーン、リモート会議で投影することを考えれば、高機能なメニューを組み合わせて動画形式で保存すれば、以前の簡単動画ソフトで作成した動画を超えるよいものができます。
高機能プレゼンテーションの作成依頼はこちらで行っています。
このように、作りたい成果物に合わせてレイアウトの技法は異なります。PowerPointの操作スキルは、提案書、提案資料を作成するにあたっても、非常に重要なものとなっています。
(この投稿は2016年11月5日 公開のマイベストプロのコラムを更新したものです)